−世界遺産 合掌造り 飛弾白川郷− 初夏の白川郷1.はじめに 世界遺産を紹介するNHKの番組で、 白川郷が何度も取り上げられています。 飛弾の奥深い山峡に並ぶ合掌造りの風景 は、異国情緒すら感じさせてくれます。 NHKの番組から ←屋根葺き ↓冬景色 初夏の白川郷を訪ねてみました。 滋賀県方面から車で行くときは、名神の一宮JCTで北陸東海道に乗り換え、 荘川ICまで走れば便利です。 「庄川桜」のエピソード を残す御母衣(みぼろ)ダ ムを抜け、しばらく庄川沿 いに国道156号を進むと、 合掌造りの集落が目に入り ました。 異国の村に到着したよう な感動が湧いてきました。 2.どぶろく 白川村萩町の宿に着いたのは、午後3時頃でした。 宿の奥さんから案内図をもらい、最初に向ったのは「どぶろく祭りの館」で す。どぶろくの振る舞いは4時まで、と聞いたためです。 神社の鳥居の横に「どぶろく祭りの館(やかた)」がありました。 入館料300円を払い、まず「どぶろく祭り」の紹介ビデオを20分ほど拝 見しました。予備知識のなかった私は、「どぶろく祭り」がこの村挙げての 一大行事であることを初めて知りました。 館の中を拝見した後、受付けのところ で振る舞っていた「どぶろく」を、朱塗 りの杯でいただきました。 ←白川八幡宮 ↓どぶろく祭りの風景(ポスターから) 感激しました。実においしいのです。 とろりとしたどぶろくが、すっと喉の奥に流れこみました。あまりの美味し さに感激していると、もう一杯お代わりを勧めてくれました。 どぶろく祭りは、10月14−15日に行われるそうです。この日に備え、 寒の時期に仕込み、半年以上かけて仕上げるのだそうです。 私の作った(アルコール度数1度未満の)酸っぱいどぶろくなどは、比べ物 になりません。これなら、なけなしの札束をはたいてもいいと思いましたが、 一切販売していないとのことでした。 3.展望台から あまりにおいしいどぶろくに出会ったため、これで充分来た甲斐があった、 と感激しました。しかし、本来の目的を忘れてはいけません。 まずはぶらぶらと、合掌造りの家が並ぶ村内を散歩しました。 次に、集落を抜けた高台にあるという展望台(荻町城跡)に向かいました。 歩いて15分ほどで展望台に着きました。 ←合掌造りの民家 ↓ 展望台からは、合掌造りの民家 が並ぶ集落を一望できました。 このような景色は、日本広しと 言えど、ここ以外では見られない でしょう。 合掌造りの家は「ドイツの農村 家屋に酷似している」と、およそ 70年前に、ブルーノ・タウトは 「日本美の再発見」の中で述べて います。 手前の大きな家は、次に紹介す る和田家です。 ←展望台からの一望 4.和田家 合掌造りを公開している家が3軒ほどあるそうです。 和田家はその中のひとつで、国の重要文化財に指定されています。 (入館料:大人300円 午前9時〜午後5時) ←正面(西) ↓裏(東) 和田家は、代々庄屋や村長などを務めてきたそうです。 現在の家がいつ頃建築されたのかは、明確ではないようですが、300年以 上は経っているそうです。 居間、仏間、寝室など、日常生活の場 は1階です。 ←煤けた太い梁 ↓炭火を絶やさない囲炉裏 2階は作業場です。 かつてはここで養蚕がされたようです。 ←2階の広間 ↓養蚕の道具 合掌造りの特徴のひとつは、釘を使わないこと です。萱葺きの屋根は、およそ30年毎に葺き替 えているそうです。 驚いたことに、葺き替えの作業は200−300 人の村人が総出で行い、僅か1日(準備を含めて 2日)で仕上げてしまうのだそうです。 ←2階からの眺め ↓3階 5.火の用心 村の中には、小さな水路が無数に走っていました。 どうやら、全ての家の傍に水路があるようです。 山からの湧き水が豊富で、飲用には湧き水を使った 簡易水道が使われているとのことでした。 ←音を立てて流れる水路 ↓鱒の放し飼い 各家の近くに、小さな三角屋根の小屋がありました。 尋ねてみると、消化栓とホースが収納されているそうです。 茅葺きの家の大敵は火災です。 今でも毎日、朝・夕方・夜・深夜の4 回、「火の番廻り」が行われています。 3回目までは組単位で、深夜の4回目 は村全体を当番が1時間かけて回ってい るそうです。 ←消火栓の収納小屋 6.思い出ノート 今回泊めていただいたのは合掌造りの家でした。 元気で明るい美人の奥さんが切り盛りしていました。 家のすぐ後ろを水のきれいな庄川が流れています。 縁側に座ると、家の前の水路を流れる水の音が聞こえます。訪ねたのは6月 中旬だったので、蛍の乱舞を楽しめるかも知れない、と期待していましたが、 ここでは7月にならないと蛍は出てこないということでした。 ←庄川 屋根が斜めになっているのは、湿気が 入るのを防止する工夫だそうです。 ↓泊めていただいた家 山菜料理の夕食をよばれた後、久し振りにテレビのない部屋で寛ぎました。 水路の水音を聞きながら地酒を楽しみ、ぐっすりと眠りにつきました。 翌日は、前日に増して快晴でした。 遠くに、雪の残っている白山が見えます。 澄んだ空気と高い建物のない景色を見 て、カナダのバンフを思い起こしました。 ←残雪の山を遠望 ↓朝の街路 昨夜、宿で見た思い出ノートには、沢山の横文字が書かれていました。 ドイツ、オランダ、アメリカ、オーストラリア、台湾、中国等々、世界各国 からの旅行者が思い出を綴っていました。 外国人にとって、白川郷は東京や京都と並んで人気があるようです。 7.おわりに 白川郷の美しい景観は、自然の美しさだけではありません。 日本の景観を台無しにしている電柱と電線が、あまり目立たないように配置 されています。 (景観の向上に関心をお寄せの方は、別掲の「美しい国 日本の景観」も ぜひご覧ください) 秋のどぶろく祭りで、振る舞い酒にあやかりたいものだと思いました。 宿泊の予約ができるかどうかを宿の奥さんに聞いたところ、ご主人と二人で 祭りの手伝いをするため、休業するということでした。 (散策:2007年6月11〜12日) (脱稿:2007年7月1日) -----------------------------------------------------------------この記事に感想・質問などを書く・読む ⇒⇒ 掲示板この稿のトップへ エッセイメニューへ トップページへ